【レポート】長野の「山」と「湖」から温暖化を考える<ゼロカーボンミーティングin長野>を開催しました
2026年2月5日、長野市リサイクルプラザ多目的ホールにて、
長野地域振興局主催の「ゼロカーボンミーティング in 長野」を開催しました。
会場・オンライン合わせて多くの方が参加し、“気候変動の歴史を知ること” から
“自分たちや地域でできるアクション” まで、幅広く学び合う時間となりました。
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■第1部:基調講演『ナウマンゾウから学ぶ地球温暖化』
野尻湖ナウマンゾウ博物館 館長 近藤洋一 氏プロフィール
東京生まれ(1955年)
信州大学大学院理学研究科を修了(1984年)
野尻湖ナウマンゾウ博物館開館当時から学芸員として勤務。
野尻湖ナウマンゾウ博物館館長に就任(2016年)
学生時代から野尻湖発掘に携わり、現在、野尻湖発掘調査団の事務局を担当。
古脊椎動物学、第四期学が専門の理学博士。
日本各地のナウマンゾウの研究や、古型(こけい)マンモスの研究も進める。

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◆ 野尻湖の地層は「気候のタイムカプセル」
講演の中心となったのは、長年野尻湖の発掘に携わってきた近藤館長が見てきた、
地質から読み取れる気候の変動です。
野尻湖では、
• 30cm掘ると約3万8千年前
• 40cmで約4万4千年前
• 1mで約5万年前
という具合に、氷期・間氷期の気候の変動が細かい地層として残っています。
2025年3月の発掘では、ナウマンゾウの大腿骨・肋骨・椎骨に加え、
• トウヒ
• ツガ
• ヒメバラモミ
• スモモの種
• オニビシ
• 水生植物の化石
• 貝化石(当時の湖の深さ20〜30cmを示す)
などが次々と出土。
「5万年前の信州はどんな環境だったか」が手にとるようにわかるとお話されました。
参加者の皆さんも、5万年前の信州はどんな様子だったのか、想像されたのではないでしょうか。
◆ 地球は40万年の間に“寒暖変動”を繰り返してきた
館長は、野尻湖でのボーリングのデータを、グリーンランド氷床の同位体データと重ね合わせ、
世界と野尻湖周辺の気候変動がぴったり一致することを紹介しました。
つまり、野尻湖の地層で「地球が暖かくなったり寒くなったりした歴史」が読み解けるということです。

◆ しかし、いま起きている温暖化は“自然の変動”では説明できない
館長が示したのは、
• CO₂濃度が80万年で最高値(410ppm超)
• 気温上昇のスピードは過去の比ではない
• 人間活動が原因である可能性は95%以上(IPCC)
という科学的データ。
さらに温暖化によって
• 哺乳類の18%
• 両生類32%
• 無脊椎動物28%
など、多くの生き物が絶滅の危機にあることも紹介されました。
「生き物はゆっくりした変化なら適応できる。でも今は急激すぎて追いつけない。」
と語る館長の言葉が印象的でした。

◆ AIに“温暖化対策”を尋ねると?
講演の後半では少しユーモアを交えながら、館長がAIに尋ねた温暖化対策の回答を紹介。
• LEDへ切り替える
• ゴミの削減
• 地産地消
• 公共交通の利用
• 食品ロスをなくす
など、今日から取り入れられるアクションが並びました。
『AIは本当に大量の電力を使うのか?』という問いに対して、
『大規模モデルの場合にはたくさんの電力を消費するが、一般の人が使うぐらいのAIを使うぐらいでは、
さほど電力が使っていない。
また、AIはエネルギーを消費するが、適切に使えば温暖化対策の強力な味方にもなる。』
というAIの回答には、会場からも小さな笑い声があがりました。
講演は、“地球の大きな歴史の中で考えると、今の現状の異常さというのは分かるのでは”という
メッセージで締めくくられました。

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■第2部:パネルディスカッション『地球温暖化について考える~豊かな暮らしにつなげよう 今日から私にできること~』
ファシリテーター:
・浜田 崇(長野県環境保全研究所 自然環境部部長/信州気候変動適応センター スタッフ)
パネリスト:
・近藤 洋一 氏(野尻湖ナウマンゾウ博物館 館長)
・井川 洋 氏(環境省信越自然環境事務所 戸隠自然保護官事務所 自然保護官補佐)
・杉田 恵美子(長野地域振興局 環境・廃棄物対策課長)

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◆ 山・湖・里山で実感する“季節のズレ”
まず井川氏から妙高戸隠連山国立公園の現場で感じている変化が共有されました。
• 高山植物のお花畑がイネ科植物に置き換わる
• ライチョウの餌となる植物が減り、生息地の質が低下
• 湿地の水の流れが変わり、ミズバショウがうまく育たない
• 昆虫と植物のタイミングの“ミスマッチ”が起き始めている
気候変動は山の頂にも確実に影響していると言います
一方、近藤館長からは、信濃町での観察記録として
• 夜間に飛来する蛾が極端に少なくなった
• 野鳥の渡りのタイミングが1〜2週間前後する
• シカ・イノシシ・キツネを毎日のように見かけるようになった
など、生き物の行動が目に見えて変わっていると報告がありました。

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◆ 会場のみなさんの“体感”もデータにぴったり一致
県環境保全研究所の浜田が質問すると、
• 「雨が減った気がする」
• 「去年の夏はとにかく雨が降らなかった」
• 「雪が減った/降る場所が片寄ってきた」
といった声が多く挙がりました。
こうした“暮らしの感覚”と、研究データが同じ方向を示していることが、改めて共有されました。

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◆ 私たちの日常ではどう取り組めばいい?
後半では、登壇者・参加者から実践例が紹介されました。
• 地元産の野菜を選ぶ
• 車の急加速を避け、アイドリングを減らす
• バス通勤に切り替える(健康にも◎)
• 雪かきを“運動”として楽しむ
• 洗濯物はまとめて回す
• 子どもたちと自然エネルギー工作を楽しむ
参加者の方からは、「風車の工作を通じて“自然エネルギー”を子どもたちに伝えている」
という実践も紹介されました。
また、車の運転については「発進で20km/hまで5秒かけると燃費がぐっと良くなる」
という具体的なテクニックも共有されました。

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■ まとめ
今回のミーティングは、「地球の過去 → 信州の今 → 私たちの暮らし」という流れで理解を深めることで、
温暖化が“遠い問題ではない”ことが自然と見えてきた会でした。
ナウマンゾウの化石が示す長い歴史は、「いま起きている変化がいかに急激で特別か」を教えてくれます。
そして同時に、小さな行動が集まれば、未来を変える力があると感じられる、温かい対話の場となりました。
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大勢の方にお集まりいただき、「ゼロカーボンミーティングin長野」は盛況のうちに終了となりました。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。



