【レポート】南信州から考える”ゼロカーボンを目指すためには”
2050ゼロカーボンを目指し何ができ、何をすべきかを考えるため、令和5年10月28日(土)に飯田市座光寺の南信州産業センター(エス・バード)で、「ゼロカーボンミーティングin南信州」を開催しました。
はじめに、立命館大学経営学部教授のラウパッハ・スミヤ・ヨーク氏を講師としてお招きし「地域連携を軸にしている脱炭素経営」について基調講演をいただきました。
ラウパッハ氏からは、「環境に配慮した商品は数多くあるが、それを作るために膨大なCO2が排出されており、そこを変えていかなければならず、脱炭素経営は社会的責任からビジネスの根幹になりつつある」ということや、それに対する問題と、今後どうする必要があるのかをお話しいただきました。
続いて、千葉商科大学准教授の田中信一郎氏のコーディネートで、基調講演をいただいたラウパッハ氏、そして地域の皆様によるパネルディスカッションを実施しました。
おひさま進歩エネルギー株式会社の蓬田氏からは、これまで、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを導入しまちづくりを進めようと事業を展開してきたお話をいただきました。
近年ではさらに、そのポテンシャルで重要度が高まっている小水力発電所の建設にも力を入れており、今年から売電を開始した「野底川小水力発電所」では、地元企業や金融機関、市民ファンドの協力を得て建設。売電収益の1%を地元まちづくり委員会へ寄付し、森林公園整備や環境学習に役立てようとしています。
※くらしふと信州では、今春、おひさま進歩エネルギー株式会社の海部さんと伊藤さんを取材しました。記事はこちらからご覧いただけます。
アップルキャブ南信州広域タクシー株式会社の鈴木氏からは、事業で使用するタクシーの95%を次世代自動車や低排出車へ代替しており今年10月末で100%を代替するという報告がありました。
経営理念として、「人と環境に優しい『安心』を提供する」ことを目指しており、ゆとりを持った運転をすることで安全はもとよりエコドライブに繋がることを意識し、エコドライブコンクールやプロドライバー事故防止コンクール等で受賞されています。
さらに、エネルギーの地産地消を目指し、自社に太陽光発電システムと充電設備を導入しました。導入されているEVは移動手段のみならず、災害時のライフラインとしての蓄電池にも活用できるよう体制を整え、安心な地域づくりに貢献しています。
KOA株式会社の吉川氏(※吉川氏の「吉」は、土のしたに口。以下同じ)からは、自社の温室効果ガス排出量について、2030年までに対2020年度比で70%削減目標を設定したというお話がありました。省エネ・創エネで抑制しつつ、地域で作られたグリーン電力を積極的に購入することで削減につなげ、地域の森林整備も促進していくとのことです。
また、地域の18事業者で構成されているリサイクルシステム研究会では伊那谷の自然エネルギー地産地消モデルの構築を目指しています。グリーン電力を購入するという第一歩を踏み出したものの、まだまだやらなければならないことは多くあり、どのように連携していくか模索していきたいとのことです。
御三方の発言を受け、ラウパッハ氏から「講演した内容(地域連携を軸にしている脱炭素経営)にほぼ取組んでいて、非常に感銘を受けた。企業において脱炭素化を行うことは重要であるが、それ以上に脱炭素化することに伴い地域の課題解決につなげられることが大切であり、そこが意識されており素晴らしい。」とコメントといただきました。
最後に出席者からそれぞれの思いをお聞きしました。
蓬田氏:企業と連携し再エネを導入するのに合わせ、その企業の悩みを解決できたことを事例に、今後も地域で抱えている課題と再エネを導入することをミックスして活動していきたい。
鈴木氏:今後どうするかを考えると、どうしてもハードルが高くなってしまい、現状維持で止まってしまうが、小さなことでも何かひとつ成功事例を作ることが脱炭素に繋がるのではないか。この南信州全体でできれば、目指すところへ進めると思う。
吉川氏:「地域の価値」と「企業の価値」を同時に高めていく連携が今後必要であるため、KOA株式会社として、またリサイクルシステム研究会の一員として考えているところで、商品の環境価値についても重要なことなので、今後もホームページ等でお知らせしていきたい。
ディスカッションの最後に、コーディネーターの田中氏から、「ステークホルダー形式の企業が取って代わらなければならない。古くて新しい経営の在り方が将来を変えていく。そんなことをこの南信州から目指していきましょう」と締めくくられました。
午後は、飯田市立松尾小学校と同龍江小学校から取組発表がありました。
松尾小学校からの発表は「オオムラサキプロジェクト」。過去に同校の児童たちがオオムラサキの幼虫を発見したことに感銘を受け、今はどうなっているのか調べました。
続いて、龍江小学校からは「龍江の竹と私たち」。地域に害を及ぼす放置竹林を有効活用する取組です。今回発表した6年生は4年生の時から実情を学び、地域の団体の取組について調べ、現在の活動につなげています。
最後は、アルクマと笑顔の記念撮影!
当日の様子はYouTubeでご覧になれます。ぜひ講演やパネルディスカッション、小学生の発表について聞いてみてください。