イベント

【レポート】くらしふとピッチ(自治体向け)を開催しました

エリア : 松本市

開催日時:2026年8月20日(木)13:00〜17:00
開催場所:松本市 信毎メディアガーデン 1Fホール

 

地域脱炭素(ゼロカーボン)は、難易度が高く地域性や複雑性を内包しています。本イベントは単なる座学ではなく、自治体職員同士が抱える課題や悩みを「本音」で共有し合い、先進事例の共有やグループワークを通じて、実効性のある次の一手や地域間・官民での連携モデルを見出すことを目的として開催されました。

 

1. オープニング & キーセッション(方向性の確認)

■ 開会挨拶:長野県環境部ゼロカーボン推進課長 龍野 真一 氏

長野県で脱炭素を推進していくために、長野県ゼロカーボン戦略を改めて共有させていただくとともに、県内各地域の取り組みから知見や課題を学び合い、自治体間での交流、意見交換を積極的に行っていただき、新たな連携や共創に繋がることを期待している。

専門家からの適切なアドバイスを受けつつ、単なる伝達の場を超えた実りある「学びの場」としていただきたい。

各自治体における人的・物的リソースの厳しさを十分に踏まえた上で実効的な議論を行い、本日の研修がそれぞれの地域で、脱炭素に向けた具体的な取り組みをさらに推し進めるきっかけとなることを願う。

 

■ 講演①:「長野県ゼロカーボン戦略の改定について」
長野県ゼロカーボン推進課 ゼロカーボン戦略推進係長 三井 聡 氏

令和元年台風第19号による甚大な被害を受け、県は同年に都道府県としては初の「気候非常事態宣言」を行い、脱炭素社会づくり条例を可決。2021年6月に策定された「ゼロカーボン戦略」は、2025年度(5年目)には中間見直しが行われた。

目標値と進捗:2030年度温室効果ガス6割削減・2050年ゼロを堅持。現在、削減目標6割に対し実績は約4 割、再エネ拡大目標2倍に対し約1.5倍にとどまっており、取り組みの加速が不可欠。

長野県の特徴:温室効果ガスを削減しつつ経済成長を維持する「デカップリング」が全国平均より進展。県民の危機感は約8割と高いものの、実際の行動化にはハードルがある。

今後の戦略展開:戦略目標は維持。「美しい信州を将来世代に引き継ぐために、脱炭素化をリードして、世界に貢献していく」方針を改めて県民に共有していく。トランスポート(トランジットモール、パーク&ライド促進)、省エネ・創エネ(小水力発電、ソーラーシェアリング)、環境負荷の少ないライフスタイルへの大転換など、分野横断的な気候変動への「適応策」の推進。また、約3.3万人に配信する「くらしふと信州」メルマガ等のプラットフォームを通じた情報発信を強化する。

■講演②:「自治体が脱炭素化の取組を推進するために持っておきたいマインド」
法政大学社会学部 教授 / くらしふと信州運営統括 茅野 恒秀 氏

【キーメッセージ】脱炭素社会=持続可能なまちづくり 脱炭素推進は環境部門だけの問題ではなく、社会全体の仕組みを作り変える「構造変革的アプローチ」である。政策統合(地域課題解決 × 脱炭素)により、市民や企業に腹落ちするストーリーを提示し、ラストワンマイルを埋めていくことが不可欠である。

本イベントの意義:同じ悩みを持つ職員同士が本 音で話し合い、仲間を作る機会とする。

時代の潮流と本質:ネットゼロ、ネイチャーポジティブ(2030年までに生物多様性回復)、サーキュラーエコノミーという3つの社会像への転換。日本のSDGs評価では環境政策が要強化ポイントとされており、社会システムの再設計で対応可能。

中間支援(ラストワンマイル)の重要性:自治体担当者が孤立無援にならないよう、環境省マニュアルを一緒に読み解き伴走する「中間支援」の仕組みを官民で分厚く設計することが最重要。松本平ゼロカーボン・ コンソーシアムなどの相互学習・協働の場を広げていく。

 

2. 事例紹介ピッチ(先進自治体の実践と知見)

以下の5つの自治体からゼロカーボンに関する事例紹介ピッチが行われた。

① 生坂村|マイクログリッド構築に関する取り組み(地域防災・産業支援)

② 中川村|民間支援団体・地域事業者との協働(中間支援・官民連携)

③ 原村|断熱ワークショップの推進(省エネ化・連携)

④ 箕輪町|EV導入と公用車の集中管理・体質改善 (DX・行財政改革・適応)

⑤ 松本市|庁内横断体制の構築と政策統合(組織改革・政策統合)

 

3. 突破口ラウンドテーブル(ワークショップ)

参加者をA〜Fの6グループ(各席に登壇自治体、地域振興局、運営委員/県事務局、大学関係者を配置)に分け、60分 間のディスカッションを実施。

【ワークショップの主要論点と気づき】
① 登壇自治体の成功要因分析:「なぜ一歩先へ進めたのか」を多角的に分析。共通していたのは「首長・議会の巻き込み」、「現場主義の対話」、「地域の文脈に沿ったストーリー構築」であった。
② 孤立からの脱却と連携(仲間の必要性):単一の自治体・単一の部署では専門知識やリソースに限界があるため、近隣自治体との広域連携や、地域の民間団体・中間支援組織とのアライアンスが不可欠であることが認識された。
③ 次の一手の創出:「計画づくりで終わらせず、いかに実行に移すか」について、各地域持ち帰りのアクションプランに向けた活発な議論が交わされた。

 

4. 総括

本イベントを通じて、ゼロカーボン推進は「単なる環境施策」ではなく、「行政の効率化(箕輪町モデル)」「防災・ 産業基盤の強化(生坂村モデル)」「地域内経済循環(中川村モデル)」といった地域課題の解決と一体となった『持続可能なまちづくり(政策統合)』であることが改めて確認されました。
自治体職員が抱える悩みを共有し、専門家や地域の中間支援組織と手を携えることで、組織の壁やリソース不足を突破する具体的な道筋が示された非常に有意義な研修となりました。今後は「くらしふと信州」をはじめとするプラットフォームを活用し、自治体間・官民のネットワークをより一層強化していくことが期待されます。

 

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