プロジェクト進捗レポート

「楽しい!」を入り口にどうゼロカーボンアクションを広げるか??最終プレゼン! (岡学園プロジェクト第5回最終回)

   9月28日に最初のプレゼンをしてから、実は学生から少し戸惑いの声がありました。
(9月28日のレポートはこちらをご覧ください)

今回のプロジェクトは学生たちのマーケティング論の授業の一環として行われているもので、本来マーケティングでは、クライアントが「どんなターゲットにどうなってほしいか」ゴールが決まっていると想定していたけれども、くらしふと信州(学生にとってはクライアント)からのフィードバックを受けて、「ゴール設定が明確でなく、どうしたらよいかわからない」と。

まさにそう。くらしふと信州では、あらゆるステークホルダーと行動変容を促す、学び・つながり・共創する場をつくっていく、という目的で行っているため、ターゲットは幅広く、ターゲットによってゴール設定も様々。ここが私たち担当にとっても、難しいと感じるところであり、学生たちがその違和感や迷いを“なんとなく”流さずに、きちんと私たちに疑問をぶつけてくれたことはとても嬉しいことでした。

結果的に、当初の予定よりも多く、くらしふと信州拠点に学生が自主的に訪れ、一緒に話しをする中で「どんなターゲットにどうなってほしいか」というゴール設定をそれぞれのチームと行い、「もっと面的に広げるには?」「地域課題の解決にもつなげるには?」「こんな懸念はどう解決する?」と投げかけながら、対話をしていきました。

11月30日、ついに迎えた最終報告会。

それぞれのチームの発表内容は…

<Aチーム>
車通勤をしている社会人をメインターゲットにし、少しでも低炭素な移動手段への移行を促すことを目的に提案内容を考えてくれました。
新たなアプリをつくるのではなく、あらゆる移動でポイントが貯まる既存アプリ「Miles(マイルズ)」を活用し、会社ごとに参加した社員が獲得したポイント数を競う「くらしふとカップ」を開催し、優勝すると商品がもらえる、というもの。
また、参加企業の広げ方はあえて、大々的に広報することにお金を使うのではなく、企業間の口コミで広げていき、参加企業が多くなると商品が豪華になっていくという仕組みに。
実際には商品の原資や参加企業を増やしていくにはもう一歩工夫が必要な印象でしたが、“ゼロカーボン”という言葉を直接用いずに、いかに商品や職場のつながりをモチベーションに、移動手段を低炭素へシフトしていくか、というところを大事にした提案でした。

<Bチーム>
小学生を第一ターゲットにし、お店で選ぶ食材によって、金額だけでなく温室効果ガスの排出量が少ないほど賢いお買い物になる、というゲーム感覚の「おつかい」体験企画を提案してくれました。

このおつかいのルールや、カーボンフットプリントについて説明するのは、選択科目で消費生活学を学んでいる高校生(須坂創成高校など)と信大生。
自分たちの学びをアウトプットする機会とすることで、学生たちの学びにもなります。

協力先のお店は、SDGs推進登録企業など環境負荷の低い商品を扱う店舗に協力依頼をすることで、企業にとっても子供たちやその親へのよいPRの機会にもなる。

そして岡学園の学生は“盛り上げ役”として、チラシデザインやPRを担う。

この「おつかい」に参加する小学生は、カーボンフットプリントについて楽しく学ぶだけでなく、最近自分で計算する機会がどんどん減っていく中で、計算能力を鍛える役割も果たします。(親や学校の先生も嬉しい!)

すべて提案した自分自身でやるわけでもなく、すべて誰かにお任せでもない、様々な人の得意なことを掛け合わせ、それぞれにとってのメリットもしっかり考えてきったアイデアでした。

関係者が多い分、実現には調整が必要そうですが、企業の課題感や学生の持つポテンシャルなどを具体的に洗い出して統合的に組み合わせていったことはなかなかできることではありません。

<Cチーム>
最初のプレゼンの時から一貫して「いかに楽をしながら、無意識にゼロカーボンに貢献するか」をテーマに、“ゼロカーボンチャレンジマッチ”などゼロカーボンへの取組を積極的に行っているサッカーチーム「松本山雅」に対する提案内容を考えてくれました。
ゼロカーボンチャレンジマッチに参加した人数が、応援に来たサポーター数8000人のうち、250人と3%であったことについて、少ないかというと、この250人をつかんで離さないことが大事だ!と分析。
具体的には、オリックスで選手が考えたコラボメニューが試合会場で食べられる「オリごはん」の取組を参考に、地産地消を意識した“ゼロカーボン飯”を松本山雅の選手が考案することで、毎回試合に来るサポーターが気軽に楽しみながら環境負荷の低い食事をとることができるという提案。
食事だけでなく、容器やカップもユニフォームをデザインしたグッズとして販売し、それらを持ってくると割引になるというサポーターにとってのお得感と、チームもグッズ販売による収入が見込めるというwin-winなアイデアでした。

<Dチーム>
「脱炭素って難しい、怪しい」と率直な意見を最初のプレゼンでぶつけてくれたDチーム。
Cチームと同様「楽しみながらゼロカーボンアクションのはじめの一歩をアシストできるか」ということ、そして何より自分たち自身が楽しいを思えることに立ち返って、当初からは全く違うアイデアに変身!

その名も「駅弁ナーレ」。公共交通機関をいかに楽しく利用してもらうか、というテーマと駅弁にワクワクする自分の関心を掛け合わせたというもの。

具体的には、公共交通機関の利用が減り、無人駅や廃線などが増えていく中で、各駅をめぐりながらおかずを集めて、お弁当箱に詰めてオリジナル駅弁をつくる2年に一回のビエンナーレ企画。

お弁当箱は、戸隠竹細工や飯田水引など地域の伝統工芸品も使いつつ、食品ロス対策としては、夕方になればビエンナーレの参加チケットがなくても単品購入できるようにしたり、人気のおかずは一番マイナーな駅にあえて配置する、などの工夫まで考えてくれました。

電車の本数が少ないので、おかずを集めるのに結構時間がかかるのでは?その待ち時間をどう活用するか?というあたりはもう一歩提案があるとさらにGOODでしたが、鉄道事業者や観光事業者、地元の人たちにとっても嬉しいアイデアでした。


今回、学生とのやり取りや提案を通じて、一番感じたのは、200万県民の行動変容を考えるならば、「行政のやってほしいこと」や「ゼロカーボン」という題目だけを伝えても関心を持っていただけない人のほうが多く、いかにポジティブなイメージや入り口をつくるか、ということが多くの人が“やりたくなる”ために必要だということ。
今後のくらしふと信州の発信や場づくりは、ココを意識していきたいと思います!

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